小さな漁村の無人駅に降り立つ1人の青年。のどかでゆったりとした潮風のある風景。おや,なつかしいなぁ…,ここはいったいどこかなと思っているうちに,わたしたちはいつのまにかこの青年と一緒に,彼の17年前の少年の頃の夏の思いでの世界へとタイムスリップして行く。
翔太は例年ならこの美しい浜辺の祖母の家で,家族みんなで楽しい夏休みを満喫していたはずなのに,今年は妹のさや香と二人きり,チラホラと耳にする,"五分五分かもしれない"と言うパパの病状が気がかりで仕方がない。
ママにつきそわれ,パパが退院してきた。"パパはガンなんだ…でも頑張る。"翔太たちに,パパは自分がガンに侵されていることを率直に告げる。パパのところに志穂という少女がたずねてきた。パパの教え子で,どうしても会いたかったらしい。パパは小学校の教師だった。
家へ帰る日がやってきた。久しぶりの我が家。水入らずの家族だけの生活はいい。だが喜びも束の間,パパはまた入院し,再び家へ戻ってくることはなかった。
ママを中心に3人だけの生活が始まる。淋しい。悲しい。叫びたいのに叫べない。家族のそれぞれに訪れるSOSの愛のシグナル。ガンで死んで行ったパパの最後の贈り物はなにか。父の死を見つめ,少しずつ大人になってゆく少年翔太の日々…。